父親

最近知ったのだが、父が会社を辞めてしまうらしい。定年期は過ぎているのに、役人という感じで会社に顔を出していたらしいのだが、つい先日、いきなり上司に「もうこなくていいよ」みたいに言われたらしい。まぁ、来年の夏ぐらいまでは、会社に行かなくても給料は出るらしいが、その後は細々と年金暮らしということになる。とりあえず、ご苦労様。

というわけでボクの父について、なにか面白い話でも書こうと思うのだが、まあ別にどうという事のない平凡なサラリーマンである。そのことを、子供の頃は「つまんない人だなぁ」と思ったこともあったが、今となってはサラリーマンが一番大変だという事はよくわかってる。だから、よく最後まで会社人間としてがんばったなぁと、むしろ尊敬してしてしまうな。

父は、随分と冷静沈着に物事をテキパキと進めてしまうときがある。ビックリしたのが仙台の実家を売って、いきなりマンションにしてしまったこと。そのマンションの家賃収入で、定年後を過ごそうと言うわけだ。ボクは次男だが、まぁ長男の兄の方が上京したまま、仙台に戻る気配がないのを察知したのだろう。だったらとっとと生きているうちに家を売ってしまおうというわけだ。長年住んでいた愛着ある家を簡単に手放すとは、なかなかにドライな人間ではある。しかしコレには、わざと借金を残すことで、ボクら兄弟に多額の相続税を払わせないようにという親切心もあったらしい。そう考えると、いつでも先のことを見越して行動する頼りがいのある父親ということにもなる。

高校生の頃、ジイちゃんが死んだときも、父は涙も見せずに冷静沈着に葬式の準備やら何やらをテキパキこなしていたような気がする。もしボクが今、父親に死なれてしまった時に、果たしてそこまで冷静に葬式の手配やら何やらを出来るのだろうか。不安である。というわけで、今度父に「アンタが倒れたら葬式の準備はどうすればいいの?」と質問してみたい気分なのだが、「とんでもねぇヤツだ」って思うだろうか(笑)

父は休日に競馬をやるくらいで、あとは酒を飲む事ぐらいしか楽しみがない男である。だから、平日会社が休みの時には、昼間っから酒を飲んで、とっとと寝てしまうらしい。未だに何かと世話になることが多いオヤジだけに、定年後に急にボケられてしまっては困る。是非とも父親には、何か定年後の生きがいになるような趣味を見つけて欲しいなと今は願っている。

本日のピックアップ

アバウト・シュミット」監督/アレクサンダー・ペイン(2002)

定年後、急に生活が乱れていく初老の男をジャック・ニコルソンが好演。父には、こうなって欲しくないという願いもこめて。何ともトホホな気分満載の軽いコメディだが、ラストで不覚にも大泣きしてしまった。「人生とは何ぞや?」という気分にさせてくれる、ちょっぴり切ない映画。
(なべ)