優柔不断な正確なんで「好きなアルバム200選」なんて選んだところで、後になって「あぁ、これ入れればよかった」とか、そういうのが思いが山のように溢れてしまうわけです。で、今レコード棚を整理しながら引っ張りだして聴いたのが南佳孝の「冒険王」('84)というアルバム。もう懐かしさと新鮮さで掃除する手も止めて、じっくり聴き惚れてしまいました。いやぁ、このアルバムは素晴らしいです。そんなわけで、急遽「200選」に入れちゃいました。随時更新だから、別にいいでしょ。その代わり、落しちゃったアルバムもあるわけですが・・・。

このアルバムを聴いたのは、自分が中学1年生ぐらいでしたか。買ったわけではなくレンタル・レコードだったのですが、もうダビングしたカセットを、それこそ何度も何度も聴きましたね。アルバム全曲を作詞したのが松本隆。そうです、このアルバムは、南佳孝のデビュー・アルバム「摩天楼のヒロイン」('73)と同じく南佳孝松本隆がガップリ組んで作ったコンセプト・アルバムなわけです。

テーマは「ファンタジー」。それも少年少女のための。とはいえ、シングル・カットされた従来の南佳孝にあるような大人のラブソング路線の「スタンダード・ナンバー」は、先に出たシングル盤の曲。歌詞を変えて薬師丸ひろ子も歌ったこの曲は、アルバムのコンセプトとは異なるめため、少々浮いてます。他にも青春時代を懐かしむ「PEACE」のような大人びた曲もあるんですが、全体的には、まさしく冒険王という言葉がピッタリのファンタジー路線なんですね。

ただファンタジーといっても、ディズニーや、今のハリー・ポッターのようなものではなく、もっと少年時代の付録についていたような、実に他愛もない怪獣や宇宙船や金の財宝なんかが出てくるようなアドベンチャーな雰囲気のスゴロクのよう。しかし、そこは松本隆。そういった子供向けの冒険物のように思わせといて、最終的にはしっかりと大人のラブソング集としても聴けるものになってるんですね。というか、こういう独特の子供にも大人にもなりきれない、独特のモラトリアムな感じが、松本隆の歌詞の特徴でもあるわけです。

そして何といっても南佳孝本人の曲のよさ。歌い方がクセがあって、ちょっとネチっこい感じなんですが、表現力は見事だし、本当にメロディーもコード進行も素晴らしい。これぞ正真正銘のポップ・アルバムって感じです。みなさんも、たまには、こんなレコードで新鮮な気分を味わってくださいな。

●本日の更新「ショック太郎のマテリアル・ワールド」

エル(el)レコード特集その3です↓
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