さて「懐かしのレンタル・シリーズ」(毎回タイトルが変わるな・・・)、まだまだ続かせていただきます。南佳孝村松邦男パール兄弟に続いて今回登場するのはPSY・S(サイズ)ですね。この男女ユニットは、正直ちょっと今となっては、あまり印象がよろしくないのも事実。なぜなら「BOOK OFF」などで中古CDが投売りされている存在だから、「バブルの産物」という印象が強いのですね。たしかに売れましたけど、個人的には彼らが「売れる」以前の初期作品こそ、自分にとって最も印象が深いのです。正直4枚目以降の作品は、あまり好きではありません。

PSY・Sの特徴といえば、なんといっても松浦雅也の操るキーボードの音。当時ウン千万円もしたといわれるフェアライトCMIを所有していた彼は、それだけで業界の注目の的でした。言ってしまえば「持ってるモン勝ち」なわけでもあるんですが、この当時魔法の機械ともいわれたキーボードで、あえて通俗的なポップ・ミュージックを作っているという点がポイントだったのです。そしてチャカこと安則まみのボーカル。テクノ・ユーミンともいわれた彼女の声は、ちょっとノンビブラートな歌い方で好き嫌いはあると思いますが、歌唱力は抜群。チャカという名前は、もちろんチャカ・カーンが由来で、彼女が大の黒人音楽ファンであることも意外な事実でしょう。実際デビュー前は、完全に英語で歌っており、PSY・Sのデビュー盤は、もともと英詩を日本語にすることから始まったそう。

PSY・Sで一番好きなアルバムはセカンドの「PIC−NIC」('86)なんですが、「レンタル」という意味では、ファーストの「Differnt View」('85)ですね。ジャケ買いならぬ「ジャケ借り」です。とにかくオープニングの「Teenage」のドラムの音から新鮮でしたね。まさに「こんなドラムの音聴いた事ない!」という衝撃の未来体験。でも、あくまで「当時」の話です。今じゃ、こんなドラム缶を叩いているようなドラムの音、誰も使ってませんから。いや、もう一度、こういうドラムの音も復活するのでしょうか。そんなスットコドッコイのドラムと、キラキラしたキーボードが織り成すポップ・ミュージック。本当に新鮮な感動を覚えました。当然セカンドはちゃんと買いましたよ。このファーストは、一部の曲では英語のままになっており、コンセプト的にはまだ中途半端だったわけですが、それがかえってヴァラエティの豊かさに繋がっていて面白かったりもします。ファンキーな曲からアイドルっぽい曲まで。全部聴き終えると、頭の中がキリキリしちゃうほどフェアライトというキーボードの音色は当時斬新でしたよ。今聴くと、ものすごいスカスカなんですけどね(笑)

サード・アルバム「Mint Electric」('87)あたりでは、フェアライトによる打ち込み音もさらに複雑化していきました。「電気とミント」など楽曲の完成度も高く、本作でPSY・SならではPOPが完成したともいえますが、その「フェアライト・ポップス完成」と同時に何かを失い、一般的な人気とは裏腹に、音楽的には以後どんどん単調になってしまったのが悔やまれます。ちなみに初期作品のプロデュースは、下記のパール兄弟同様、ムーン・ライダーズの岡田徹。さらにサエキけんぞうもPSY・Sに素晴らしい詞を提供しております。