CDをレンタルしたりするのって、やっぱり今でも中学生とか高校生が多いんでしょうかね。聴きたい、欲しいけどお金がない。だけど好きな音楽を探して聴きたい欲求だけはどんどん広がる。それだけに、その頃レンタルして聴いたアルバムって、買ったアルバムと同じくらい、その人の心の中に何かが蓄積されていくと思うのです。大袈裟な言い方をすれば、一生モノになっちゃうんですね。いい意味でも悪い意味でも。恥ずかしいものも含めて、やっぱり自分が10代に出会ったモノって、その後の音楽的傾向や好みを完全に左右してしまうものだと思います。

ボクも中学生ぐらいの時、レコードを(CDじゃなかった、その頃は)レンタルしてカセットにダビングして、何度も何度もそれを聴いていたアルバムって多いです。で、数年たって聴こうかなと思い自分のレコード棚を探してみると「アレ?ないや」ってこと、多いんですよ。つまり、あんまり聴いたもんだから、自分でそのアルバムを持っているものと勘違いしていしまう。そういう「思い出の貸しレコ盤」を、あわてて今ごろになって買い直すことがあります。

この松尾清憲のファースト「SIDE EFFECTS(恋の副作用)」('85)も、そういう後で買いなおしたアルバムでした。10代の頃レンタルしてすごく気に入って、ダビングしたカセットを何度も聴き、後でちゃんとLP買いなおそうと思っているうちに、気がつくと10年以上忘れていたりする。でも、恐ろしいことに10年以上経って聴いても、ちゃんと憶えているんですよ!10代の記憶力の恐ろしさ。ここでもやっぱり「一生モノ」が証明されたわけです。

松尾清憲の魅力は、何と言っても、その「ブリティッシュ・ポップ」を追求している明快なサウンド。70年代の10ccやクイーンなどのエッセンスを80年代に甦らせて見事に再生しているわけです。彼が在籍していた幻のバンド、シネマでも、その作曲能力の高さを証明していたわけなんですが、このファースト・ソロでは、さらにキャッチーな曲づくりに磨きがかかっています。特にA面の5曲は傑作揃い!CMソングだった「愛しのロージー」は、彼のブリティッシュ・ポップ魂の美点を凝縮したような名曲で、プロデュースの白井良明のクイーンっぽいギターもハマっています。「5月のSUICIDE」のスピード感、ジャジーな「For Your Love」、美メロ炸裂のバラード「シャングリラ」、そしてソフト・ロック的なシャッフル「サンセット・ドリーマー」と、息をもつかせぬ展開。それに比べるとB面はチョイ落ちますが、それでも充分に素晴らしいアルバム。アルバム全体のミックスとかも迫力満点で、幾層にも塗り込められたエレキ・ギターの音も圧巻。ひさびさに聴いて、懐かしさだけじゃない新鮮さを感じました。