ムーンライダーズは、正確に言うと「レンタル・アイドル」ではないんです。ちゃんとLP買ってましたから。だけど、出会いはやっぱりレンタルだったんですよ。ブツは「青空百景」('82)。忘れもしない小学校6年生の時に借りました。なんでライダーズを知ったかというと、雑誌か何かに「今回のライダーズはビートルズっぽい」というような評が載っていたんですよ。で、ビートルズは大好きだったし、そんな日本のバンドがいるのならと、早速レンタルしてきました。

もう、本当に大好きになりましたね。それまで日本のバンドで好きだったのはチューリップだったんですが、このアルバムをきっかけに、完全にムーンライダーズにシフト・チェンジです。でも、初めて聴いたのが、このアルバムでホントよかったなぁと今では思ってます。すごく彼らのアルバムでもポップですからね。入りやすかったのでしょう。

マニアックだとか難解だとかいわれてる彼らですが、それはおそらく楽曲が「ライブ向き」じゃない感じがするからでしょうかね。要するに彼らの魅力は、すべてレコードに詰まってるといってもいいです。ファンに殺されそうなこと言っちゃうと、ボクは彼らのライブを何回も観にいったりしてますが、正直レコードを聴いたときほど感激はしなかった。彼らが音楽をクリエイトしていく最もダイナミックな初期衝動は、むしろレコーディングそのものにあるような気がします。だから、アレンジというか音使いが大胆なんですよ。変にバランスとれてない。そこが聴く度に新鮮なんですよ。何年活動しても、商業主義に手垢がまみれていない。そんなアマチュアっぽさも魅力です。そんなライダーズをボクは小学生に時に聴いてしまったから、逆に彼らの音楽に抵抗がなかったのかも知れませんね。ガキというのは「面白ければ何でもいい」という感じなのですよ、実際。

ライダーズは小学生向きという意外な事実をもう1つ明らかにします。ボクの2才下のいとこの女の子が、このアルバムを聴かせたら、もうすごく気に入ってくれたのですよ。彼女なんて小学4年生ですからね。そんな女の子が「♪僕はミッドナイト、2時までバイトさ〜♪」なんてニコニコ歌ってましたから今考えると驚きです。ライダーズのアルバムはいつ聴いても新鮮ですが、この「青空百景」だけは、ちょっぴり懐かしさも感じます。そのいとこの家によく泊まりに行った夏休みのことを思い出すんです。庭でバーベキューやったり花火をしたり楽しかった。そんな思い出とともに、ボクの「青空百景」はあります。