いつのまにか「思い出のレンタル日記」から「子供の頃買ったレコード」にシフト・チェンジしている日記ですが、まぁ、同じようなもんでしょ。というわけで、今日の一枚は坂本龍一の「千のナイフ」('78)です。ジャケット写真が若いですね。ちなみに、彼の着ているジャケットの洋服は高橋ユキヒロ・デザインで、アルバムには細野晴臣も参加しています。当然のことながら、YMO好きだった小学生時代のボクが小遣いをためて買いました。近所のジャスコで(笑)。ジャスコだって、昔はレコード置いていたんだぞ。あぁ懐かしや。

YMOの「BGM」が発売された頃に買ったこの教授のアルバムですが、どちらのアルバムにも「千のナイフ」という曲が入ってましたので聞き比べができました。初期ヴァージョンともいうべき教授ソロの方は、何と言ってもオープニングの長々と入っているヴォコーダーが印象的ですね。おそらくコルグのVC−10だと思いますが、当時、よく楽器屋に置いてありましたよ。もちろん高くて買えなかったんですが、当時ボク、ヤマハ音楽教室でドラムを習ってまして、その教室のとなりにあるヤマハの楽器屋で毎週のようにヴォコーダーいじってたら、店員に「キミ、子供なのに、よくシンセサイザー弾けるネェ」なんて感心されましたよ。あのままシンセ街道まっしぐらだったら教授も真っ青なアカデミックなミュージシャンになっていたかもしれませんが、当時はガンダムのプラモデルとか買って作ってる普通の子供でもあったわけで(笑)

で、もちろんヴォコーダーといえばYMOの「テクノポリス」。そうです、あの「♪トキオッ!」ってやつ。あれは簡単にマネできましたが、この教授の「千のナイフ」のヴォコーダーは、コードが複雑すぎて再現できませんでした。この長いヴォコーダーのイントロからリズムに入るところ、何度聴いても鳥肌ものでしたね。テクノとしての完成度はYMOのヴァージョンが優勢ですが、教授のヴァージョンの方がメロディアスな曲そのもののよさが伝わってきます。それは、これまた後にYMOが再現する「ジ・エンド・オブ・エイジャ」でもそうですね。これも名曲だと思います。

その他の曲は、いかにもテクノ黎明期らしい怪しげなシンセ・ミュージックばかりなのですが、当時は理解できなかったこれらの曲も今聴くとなかなかに面白いです。「アイランド・オヴ・ウッズ」なんかはドイツのタンジェリン・ドリームのようですし、「ダズ・ノイエ・ヤパニッシュ・エレクトロニシェ・フォルクスリート」(長い!)なんかは、リズムがニューオリンズっぽかったり、沖縄とスパニッシュが混じったような斬新な曲です。

その後買ったシングル「WAR HEAD」とアルバム「B−2 UNIT」('80)の方が衝撃は大きかったのですが、坂本龍一ならではのメロディーを満喫できるという意味では、この「千のナイフ」や「音楽図鑑」('84)あたりに尽きるのではないでしょうか。