このはっぴいえんどのファースト・アルバム「はっぴいえんど」('70)も、聴いたのは小学生ぐらいの時。確かURCの再発盤のレコードを兄貴が買ったんですよ。当時はYMOブームで細野晴臣も絶好調だったし大瀧詠一の「ロンバケ」も流行っていたし、松本隆松田聖子の曲とかで作詞家として大人気だった。正直、鈴木茂だけ初耳だったのですが(笑)、まぁ、それでも豪華メンバーだなぁとボクはビックリしましたねぇ。当時から伝説のバンドと言われていたから、聴く前はすごく期待してたんですよ。YMOプラス「ロンバケ」じゃないですか。そういう音楽なのかと想像してました。

でも正直に告白すると、もう全然ピンときませんでしたよ(笑)やっぱり小学生だと「ライディーン」とかの方が全然わかりやすいしカッコいいと思ってしまうんですね。伝説とか言われても、やっぱりこっちは日本のロックの黎明期とか、そういう事情も知りませんから、もうただ古臭いなぁ、貧乏臭い音楽だなぁと思うだけだったんです。やっぱり「ロンバケ」とかの方がオシャレに感じるわけですよ。「♪薄く切ったオレンジをアイスティーに浮かべて〜♪」とかの方がいいじゃないですか。それがいきなり「♪お正月といえば、こたつを囲んで、お雑煮を食べながら、かるたをしてた〜♪」ですからね。なんだかなぁ、という感じ。とても同じ人が作ったとは思えない(笑)

このアルバムの魅力は、ずばり「混沌」にあると思います。つまり完成ではなく、完成前のゴツゴツした感じが魅力なんですよ。実に60年代のアングラな日本のカルチャーの名残が色濃く反映されてますね。バンドとしてのはっぴいえんどは、正直ここがピークだったと思います。それ以降は楽曲の完成度の高さとは裏腹に、もう大瀧詠一細野晴臣のソロの寄せ集めみたいになっちゃうんですよね。鈴木茂が歌うと、それは鈴木茂のソロみたいになるし。だから、このファーストのように、細野晴臣の曲を大瀧詠一がメインで歌うなんていう曲があるのは、とてもめずらしいと思いますよ。とにかく、メンバーが入り組んで1つの新しい音楽を作ってやろうという活気が音に溢れてますね。ジャケ裏のメンバーの写真も実に楽しそうですし。

ただ、内容は暗いんですよ。なんかこう聞き終えると絶望的な気分になります。もう「しんしんしん」とか「飛べない空」とか、この世の終わりみたいに暗いし、ラストの「続はっぴいえんど」の松本隆自身の語りとか、ほんとお葬式みたいですよ。でも、高校生ぐらいと時が、一番ハマリましたね、このファーストに。「しあわせなんて何をもってるかじゃない、何を欲しがるかだぜ」とか、そういう生意気な感じの詞が青春時代にはググっとくるわけですよ。やっぱりはっぴいえんども若かったんですねぇ。やっぱり正直、細野さんの声とか曲作りとか全然なれてない感じがあります。でも大瀧詠一は、この段階でバンドを代表する名曲を既に作っていて、それは今でも驚きですけど。