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細野晴臣は、ノンスタンダード・レーベル制作時に、自分の中にある「動」と「静」が二極化し、それがハッキリと曲作りに現れてきたといいます。そのために「静」の部分を強調したような、もうひとつのレーベル「モナド」を同時進行させることが、彼にとっての必然でもあったのでしょう。モナドは、月一枚のペースで、計4枚ほどレコードをリリースしただけの実験的なレーベルでしたが、どの作品もコンセプトがしっかりしていた上に、ジャケットも美しく、たとえ音楽が、それまでのYMOファンにとっては「難解」であったとしても、細野音楽に内在する「宇宙」を垣間見れるようなスリリングな作品ばかりでした。
まず第一弾は、この「Coincidental Music」('85)(写真)。略して「CM」というその名の通り、それまで細野氏が手がけてきたCM音楽集ですが、新たに録音し直さたものや、「フィルハーモニー」制作時の自動筆記のようなイメージ音楽などもあったりと、いわば「寄せ集め」感の強い作品集ですが、全体を包む統一感は、さすが。シンプルながらニーノ・ロータのようにメロディが美しい曲など、細野氏のロマンティズムを浮き彫りにしたような楽曲が多いのも特徴的です。即興的なアイデアを即興的に作りこむことで、自分でも予期せぬような驚きのある楽曲を生み出すという実験の場が、いわばモナド・レーベルの趣旨だったような気がしますが、その中でも最も聴きやすい本作は、ファンならずとも楽しめる非常に美しく上品な作品集になっています。