山下達郎の「Tatsuro Yamashita CM Collection Vol.1」「〜Vol.2」という2枚のCDを入手しました。ファンクラブ用の通販CDで、一般のCDショップでは入手不可能なのですが、彼のオフィシャル・ページ(http://www.smile-co.co.jp/tats/)で直接購入も可能のようです。

山下達郎の魅力は充分に知っているつもりだったボクも、正直、これを聴いてビックリしましたよ。CMを集めたアルバムというと大滝詠一の「ナイアガラCMスペシャル」が有名ですが、一部やっつけ仕事的な部分もあった大滝版(それも魅力なのですが)に比べると、この達郎版は、本当に捨て曲が一曲もない。それに70年代の曲が多く収録されている点も魅力的で、何よりあのシュガー・ベイブのコーラスと演奏が聴けるのがうれしいじゃありませんか。出発点になった「三愛バーゲンフェスティヴァル’74」に始まり、「三ツ矢フルーツソーダ’74」「不二家ハートチョコレート」と、どれも本当に「ソングス」に入ってもおかしくない美メロ&コーラスの名曲ばかり。なのに、たった30秒で終わっちゃう。何ともったいない!!途中のシンセがユニークな「いちじく浣腸’75」とか信じられないものも手がけてます。解説で達郎自身も言っているように「メシのタネ」なんでしょうが、それでもちゃっかり「自分らしさ」をアピールしているところが達郎のスゴイところ。

で、何が「タツロー」なのかというと、まず「オールディーズ魂」が炸裂する曲調。そして多重録音による圧巻のコーラス・ワーク。ファンには有名な大滝詠一と交代して作られた「三ツ矢サイダー’76」のディオン風アカペラなどは、その典型ですね。70年代から90年代までの作品が収められているCDにもかかわらず、この2点だけはしっかりと守られているので、驚くほど時代性を感じさせないサウンドで統一されてます。「CMは時代を映す鏡」とも言われてますが、皮肉な事にタツロー・サウンドの前にはCMでさえ流行も時代も関係なくなるのです。あるのは、徹底的な音楽職人魂。まさに「アルチザン」の名に恥じないミュージシャンですね。

正直いってタツロー独特の音楽の魅力は、ソロ作品よりも、むしろこの「CM作品集」にダイレクトに反映されてるといったら言い過ぎ?。あと本人による解説も充実。読み終わる前に曲があっという間に終わってしまうのが嬉しい難点。いやはや、すごいモノを聴かせていただきました。ファンならずとも。こりゃ必聴盤ですぞ。