あぁ、懐かしや80年代。これ小学生の時に、ジャケットのインパクトにつられてレンタルしたレコードなんです。で、この間、ひさびさに聴こうと思ってわが家のレコ棚を探したら・・・なかった。当たり前です。レンタルしたんですから(笑)つまりダビングしたカセットで何度も聴いていたので、すっかり「持っているつもり」だったというわけです。で、紙ジャケで再発されていたようなんで、思わずCDで買い直しちゃいました。あれ、随分前にも、こんな話、しましたよね。そうです、お待ちかね、「レンタル・アイドル・シリーズ」の復活です。

このジャケットは、わかる人にはわかる太田蛍一のイラストですね。ゲルニカの影のコンセプト・メイカー(作詞担当)でもあります。またYENレーベルで「太田蛍一の人外大魔境」('83)という大傑作アルバムも発表してますが、そのアルバムのタイトル曲を歌ってるのは、他ならぬ、このヒカシュー巻上公一でした。

ヒカシューの魅力は、まずこのボーカルの巻上公一の個性的な声でしょう。演劇的といいますか、なんか急にオペラっぽくなったり発狂寸前みたいな声になっちゃうのが、何ともスリリング。これぞニュー・ウェイヴ。まぁ「好き嫌い」がハッキリ別れそうですが、このアルバムだと「出来事」という曲とかですね。「できごとがでてこない」というユーモラスな彼自身の詞も面白いですが途中の「♪でてこな〜ぁいぃ〜〜♪」とか叫ぶところ。いや、面白いです。

あと、ヒカシューは、曲がいい意味で素人臭いんですよね。何か思いつきだけで作ったようないい加減さがよいです。こういうのを聴いて「なんだよ、こんな曲だったらオレにも作れるぜ」という人もいるのでしょうが、1曲1曲がどうだこうだではなく、総合的にヒカシューという個性にまとめあげられちゃってるのがスゴイんですよ。ノリに乗ったバンドならではの「勢い」が感じられます。あとジャーマン・ロック系の影響は、かなり強いと思います。特にそれはデビュー前のデモ・テープをCD化した「ヒカシュー1978」(これは腰を抜かすほどスゴイ作品です)のリズム・ボックスを多用したサウンドあたりに感じられるのですが。

「うわさの人類」は、P−MODELの「ポプリ」同様、どことなく「黒」のイメージがあります。共に3枚目で、いわゆる「テクノ・ポップ」のイメージから脱出しようという意識がどちらの作品にも感じられるのです。カラフルな原色からモノ・トーンへ。そういう時代の流れだったのでしょうか。