たまたまこの前、自分の中学の頃の卒業文集を読んでたら、自己紹介文のところで「好きなアーティストはフランク・ザッパスティーリー・ダンジェネシス、XTC」と書いてありました。イヤなガキだね(笑)というか、今と変わんないけどね。まぁ、それはそうと、やっぱりボクは、その4つのロック・アーティストには、世間で言われるジャンル分けとは別に、どこか共通するものを感じていたのです。要するに「面白い曲を書く人たち」というイメージでしょうか。ザッパの変拍子も、スティーリー・ダンのジャジーなコード進行にも、ジェネシスのクラシカルな大曲主義にも、XTCのひねくれポップスにも、どれも「人と違う曲を書いたるぜ〜」という明確な意思だけは共通しているように思うのですが、はて?

さて、長い前置きはこの辺にして、ジャクソン・ブラウンの登場です。ボクは、この「レイト・フォー・ザ・スカイ」('73)というアルバムを中学生の時に聴きました。理由は「ロック名盤100選」みたいなものがあると、必ず登場していたアルバムだったからです。ですがもう単純に「ハズレのアルバム」だと当時は思っていたのです。ジャケットは素敵でしたが、ボクの考える「面白い曲を書く」という意味では、ジャクソン・ブラウンはまったくあてはまらないアーティストでした。詞がいいと言われても、英語力もないボクにしてみれば、それはどうでもよいことだったのです。

時は流れて、90年代。ボクは当然のように音楽に対して雑種になり、遂にはレコードを買いすぎた挙句、「本当に自分の好きな音楽」がわからなくなるほど、頭の中が混乱している状況のなかで、ふと耳にしたのがロン・セクスミスというシンガー・シングライターの新譜でした。シンプルで落ち着いたフォーク・ロック風サウンドに甲高く爽やかで、それでいてソウルフルで憂いを秘めた素晴らしい歌声。ボクは1発でファンになりましたが、どういうわけか、当時の音楽レビューで「ジャクソン・ブラウンのようだ」という記事を何度も見かけたのです。ボクはビックリして、バーゲン品でジャクソン・ブラウンの初期の3枚のレコードをまとめ買いしたのです。

時を経て聴いたジャクソン・ブラウンの音楽は、とても素晴らしいものでした。シンプルで美しいバッキング。静かだけどエモーショナルな歌声。そしてサウンドの質感。もちろん歌詞の内容も、ボクにはまだ完全に理解しきれないほど深いものを感じさせてくれます。

でも、やっぱりメロディーというか、曲そのものは今聴いても全然たいしたことないんだよなぁ。ある種「凡庸」といってしまってもいい。なのに、この胸に熱くこみ上げてくるものは何?それこそが、音楽の力というか不思議なところなんですよね。