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いまさら何なんだと言われそうなピンク・フロイドの「原子心母」('70)ですが、やっぱり、この牛ジャケ、インパクトあるなぁ(笑)
アナログA面は、プログレお得意の長〜い1曲というタイトル曲。恥ずかしくなるようなマイナーのペンタトニック・コードで、ブラスから混声合唱から、そしてお得意の効果音まで使って、いい意味でダラダラと続いて行きます。このオーケストラ・アレンジはロン・ギーシンという人で、実はほとんど彼の作品だったというのが真相です。途中で出てくるアヴァンギャルドなサウンド・コラージュは、現代音楽というより、ビートルズの「レボリューション No.9」みたいですね。まぁ、この曲は、実際フロイドだけの演奏だったら、結構退屈だったでしょうね。まぁ、それも聴きたいというのが、ファンの本音ではあるんですが。当然ライブを聴くかぎりだと、随分シンプルです。ブルースといってしまってもいい。まぁ、フロイドって、アレンジの装飾を取り除くと、ほとんどそういう曲ばっかりだったりしますが。
誤解をおそれずにいうなら、ピンク・フロイドこそ、ロック界最大の「ムード音楽」でしょう。ムード音楽なんて、それこそポール・モーリアじゃないんだからロックと相反しているんじゃないかと思われますけど、実際「狂気」('73)とかが、あれほどのビッグ・セールスを記録したというのも、やっぱりロック好き以外の他ジャンルの人たちが、いっせいに買ってしまったのではないかと思うのです。当時の自主制作系のマイナーな映画では、フロイドの音楽が無断で使用されることも多かったですし、あとはジャズ、クラシックなどが好きなオーディオ・マニアとかが興味を持ったとか。
しかし昔からボクは、有名な組曲のA面より、さりげない小品ばかりのB面の方が断然好きです。アシッド・フォークみたいな「もしも」、サイケ・ポップな「サマー68」(ボクがフロイドで一番好きな曲)、そして、死ぬほどダラダラと演奏される「デブでよろよろの太陽〜アランのサイケデリック・ブレックファスト」まで、最高に牧歌的な英国ロックの真髄、ここに極まれりですね。
しかし、やっぱりジャケットが最高ですよ。小学校の時に買ったアナログ盤、いまだに手放せないもんなぁ。この牛ジャケをパロディにしたジャケットも多いですが、写真の色合いとか、紙の質感、雰囲気までは再現されているものは少ないように思いますね。