なんとデビューから20年以上です。あぶらだこ。その奇妙なバンド名を初めて聞いたのは高校生ぐらいの時。友達が持っていたインディーズの名盤「グレイト・パンク・ヒッツ」(1983)(しょうもないタイトルだ)というオムニバスLPに彼らの曲が収録されていたからです。単なるハードコア・パンクでは収まらない、徹底的に無意味な歌詞と、ボーカルであるヒロトモ氏の「アイヤヤヤヤ!〜ゲ〜〜!」っという表記不可能な怪鳥音ともいうべき雄叫びが、まだ青二才のボクに鮮烈な印象を残してくれました。

ちなみに写真はセカンド「あぶらだこ」(1986)ですが、彼らのアルバムって、すべてタイトルが「あぶらだこ」なんで、ジャケを見るまで何枚目の何年頃のアルバムなのかってのがわからないという、なんとも人を食ったリリース方式だったりします。しかし、どのアルバムも流行だの世間の風潮だのとはまるで関係なく、徹底的に「無意味」を追求するようなサウンドに溢れていて、今もって、どのアルバムも孤高のポジションをひた走っているといえますね。徳間ジャパンから発売されたファースト・アルバムの時点で、既に熱心なファンさえも「まったく」と呆れさせるほどプログレに変調してしまった彼らですが、そうやって極限まで「無意味」な歌詞とサウンドを追求していく様は、ロック・ミュージシャンというより、ほとんど修行僧といってもよいでしょう。

それにしても、このボーカルの声。この声を面白いと思うか苦手だと思うかが評価の分かれ目ですね。が、そもそも音楽を「評価」するなんて考えてみれば、どうでもいい事でして、聴いてイヤな気分になることも、それはそれでまた「音楽」なのです。まぁ、ボクは聴いてイヤな気分にはなりませんが、じゃあいい気分になれるかというと、それはまた別の話。ただ、いつも聴くたびに日常の風景がグニャっと歪んでしまうような現実逃避ができるのと、わけもなくストレスが発散できるので、時々無性に彼らの音が恋しくなるんですね。やっぱり、このまま30年、40年と永遠に活動を続けていって欲しいものですね。

「パンクなんて、学歴社会と同じですよ。パンクって制服を着て、バンドがここまで来たらレコード出してハクつけて・・・ちゃんとした出世コースがあるんです」(ヒロトモ)