バブルというのは恐ろしいもので、このシネマの「モーション・ピクチャー」('81)というアルバムも、80年代の終わりぐらいのアナログ盤相場価格は一万円ぐらいだったという、いくらなんでも法外な値段でしたっけ。が、それでも「欲しい」と思わせるぐらいの魅力が、このアルバムにはありましたね。ムーンライダーズの80年代のアルバムを一通り揃え、さらに鈴木さえ子の・ソロ・アルバム群にノック・アウトされ、さらに松尾清憲の「愛しのロージー」('85)のCMソングに死ぬほどヤラれてしまった中高生の身としては「次は鈴木慶一プロデュースのシネマだ!」と意気込んでいたものの、とっくに廃盤。レア盤買う金もないし、CD化もされてなかったし・・・。

でも、何故か「君のプリズナー」をEP盤を100円ぐらいで手に入れたんですよ(ミノルタ・カメラのCMソングだったかな)。鈴木慶一が作ったその曲は、マイナー・メロディを生かしたレゲ・ロック風で、ポリスというより「ポリスっぽい」といわれていたデフ・スクールのスティーヴ・リンゼイが結成したプラネッツ風のサウンド(マニアックな話ですね)。さらにB面の「スイッチ・オン」が松尾清憲によるスウィング・ジャズっぽいリズムとコロコロ変わる可愛らしいメロディーが炸裂したサウンドで、う〜ん、コレもいい。その後もシングル盤だけは手に入れることができたのに、なかなかアルバムだけは買えなかったという半殺し状態が続いておりました。

ようやく手に入れることができたアルバムは素晴らしいものでした。シャッフル・ビートの「クリームソーダ・ベイビー」、疾走感あふれるグラマラスなロックンロール「愛しのクリスティーン」など、特に最初の4曲が素晴らしい。なによりも徐々にバンド・サウンドから解体していった本家ライダーズとは違って、「バンド・サウンド」しているのがシネマのいいところ。ポップといっても、「英国」風なのを日本語の歌としてちゃんと成立させているのはサスガですし。さらに、一歩間違えるとベタな歌謡曲になってしまうところをギリギリで回避しているような、そこはかとなく漂うマニアックなこだわりも感じさせてくれます。

ボーカルが松尾清憲なんて、やっぱり彼のソロに近い雰囲気ではありますが、ドラムとコーラスしている鈴木さえ子もいい味出してます。ドラマーが女性なんて、英国のハニカムズみたいですね。映像とか観たことないけど、あったら最高でしょうね。さらにメンバーの一色進が作ったタイツというバンドの「Gorlden Pops」('85)という25インチ・アルバムもあるんですが、これまたシネマをさらにB級にしたようなサウンドでしたっけ。