リトル・フィートの最高傑作は「ディキシー・チキン」なのかもしれないけど、個人的に愛聴盤なのは、どうしても「セイリン・シューズ」('72)なんですよね。ファンキーな要素が開花する前の、泥臭いアーシーな雰囲気が魅力的です。このバンドの名づけ親が、フランク・ザッパで、もともとザッパ・バンドのオーディションで集まったミュージシャンなのですが、そこら辺のアクの強さのようなものが「ディキシー〜」よりも濃厚に伝わってきますね。


アクといえば、このジャケも強烈です。ネオン・パークは、フィートのジャケのほとんどを手がけている名イラストレーターですが、ザッパの「いたち野郎」('70)も彼でしたね。ザッパつながりといえば、「セイリン〜」でベースを弾いてるのも、ザッパ・バンドでもおなじみのロイ・エストラーダで、さらにザッパのただ一度きりの来日公演(76年)の時のベースも彼でした。さらに「いたち野郎」の1曲目で奇声を発しているのがローウェル・ジョージ在籍時のマザーズの貴重な音源であったり・・・。というわけで、ボクの中では「セイリン・シューズ」と「いたち野郎」は、2つで1セットです(笑)


名曲「Willin'」はもちろん、「Cold,Cold,Cold」や「A Apolitical Blues」のような、たたみかけるブルース魂は男気に溢れていて、ここら辺が多少フュージョン寄りになった後期のフィートとは違う、この時期ならではの魅力です。1曲の「Easy To Slip」あたりのドライブ感は、やはり同時期のドゥービー・ブラザースにも通じる魅力ですが、プロデューサーが、同じワーナーのテッド・テンプルマンですからね。一応元ハーパース・ビザールで、その後ヴァン・ヘイレンのプロデューサーで有名になった人です。それにしても、メンバーチェンジをして、時代の流れに上手く乗っかりながらも完成度を高めていったドゥービーと比較すると、やはりフィートの場合はローウェルの死が、どこまでも痛いです。もちろん再結成してからも音楽的には質が高いとは思うんですが・・・。


しかしフィートやらドゥービーやら、ライ・クーダーとか、他にもたくさんあるんですが、70年代ワーナー/リプリーズは、名ロック・バンドの宝庫ですね。そうそう、同じバーバンク仲間のヴァン・ダイク・パークスも「セイリン・シューズ」をカヴァーしてました。