UKスワンプの名盤として名高いアンドウェラの「People's People」('71)は地味ながらも大好きなアルバムですが、そのリーダーの幻のファースト・ソロ・アルバムが、この「Songs Of David Lewis」('70)です。何が幻なのかというと、プレス枚数が50枚だったんですね。50枚って、ホント身内に配って終わりじゃないですか。blue marbleのデモCDより少ないぞ(笑)


ところが、内容が50枚なんてもったいないくらいに良いんですね。一部の曲はバンド編成になってますが、基本的にはピアノ、もしくはギターの弾き語り。ちょっと男臭くもあり泥臭くもあり、またジェントルな感じもする彼のボーカルに、シンプルながらもメロディアスな曲がいい感じでマッチしてます。ピアノの弾き語りの曲はキャロル・キングの男番のようですし、バンドの曲はスワンプ風味。でも、個人的にはアコギの弾き語りがやっぱり好きです。ギターの弾き語りになると、なんかこう英フォークならではの曇り空の雰囲気が幻想的でさえあります。


もちろんボクの持ってるのは当然オリジナル盤ではなくVinyl JAPANからの再発CDですが、その解説を読んでビックリしました。ボクはこのアルバム、てっきり彼がソロ・デビュー用に業界に売り込むために制作したレコードなのかと思っていたのですが、そうではなくソロ・デビューに向けての「試作品」として制作したレコードということなのです。つまり誰のためでもなく自分のために作った音楽。何とも奥ゆかしく、それでいて素敵な話じゃありませんか。


ボクは、こんなレコードがあってもいいと思うのです。親しい友人のためだけに配るレコード。自分のために作るレコード。「着うた」とか「ネット配信」とかいって、求めている音楽がすぐ手に入るなんてボクにはつまらない。音楽とは出会いであり、限られた時間で出会える音楽なんてわずかなんです。もちろん一生出会わない音楽もあります。でも、それも哀しむことじゃないんです。だからこそひとつひとつの音楽との出会いを大切に、ということですね。


ボクの少ない経験からすると、音楽というのは念じていれば必ず好きなものに出会えます。う〜ん、これじゃ答えにもレビューにもなってませんが(笑)まぁ、コレを聴いてふと、そんなことを思いました。