スライ&ザ・ファミリー・ストーンの「暴動」('71)のモコモコさは衝撃でした。ボクは高校生ぐらいの時にCDで初めて聴いたのですが、「CDは音がよい」という概念を見事にぶち壊してくれましたね(笑)もう「なんだこりゃ?」って感じでしたよ正直。不良品じゃないかと思ったくらい(ヒドイな)。しかしそんな「暴動」が、今や無人島に持っていきたいアルバムの、かなり上位に食い込みそうなほどの自分にとって重要盤になるとは、思いもよらなかったです。


つまり変だなぁと思いつつも、なにか抵抗しがたい魅力があって、聴いても聴いても「謎」が解けない部分があって、音のヌケが悪い分、かえって音の背後に見え隠れするものが、ものすごく「巨大」なものに思えてきたり、と。それがずっとリピートして、今日にいたってるわけです。スライは「スタンド!」や「フレッシュ」も名盤だとは思いますが、個人的には「暴動」に漂う独特の「暗さ」にひかれます。それはまるですべてに諦めているようで、でも足取りはしっかりと前を向いて少しずつ進んでる、みたいな感じでしょうが。


それにしてもスライの歌い方って変です。あんまり黒人的(ソウルフル)じゃないんですよね。たとえばカーティスの誠実さとか、マーヴィンの甘さとか、そういうのとも違うのは当然として、ジェームス・ブラウンみたいな豪快な感じとも違う。シャウトとかするんですけど。それ以上に「ウエぇ〜」とか「ハァ〜〜」みたいな、なんとも形容しがたい唸り声が多くて奇妙。この爬虫類的な気持ち悪さって、むしろT・レックスのマーク・ボランに近いような気がするんですよね。そういう意味では、まさしくロックな人でした。


あとはリズム・ボックスをパーカッションみたいにしてシンコペーションするドラムをボテボテと重ねるという独自のスタイル。これがメチャメチャ最高です。90年以降に評価されるレア・グルーヴの基本がすべてここにあります。


ハイファイを放棄したからといって、じゃあスライは、今でいう「ローファイ」みたいなものに意識的だったのか?というと、案外そうでもないような。ちなみに全米1位に輝いた「ファミリー・アフェアー」はフィラデルフィア・ソウルのギャンブル&ハフがアレンジに絡んでいるはず。でもモコモコ。これは、もうスライの血が濃すぎたということしか言いようがありませんな。天才とはこういう人をいうんですよ。さすがに落ちるのも早かった人だけど。