生き方そのものが音楽になっていて、素晴らしい。このアルバム('70)を制作していた頃、ヴァシュティ・バニヤン(Vashti Bunyan)は本当に動物たちに囲まれて放浪の旅をしていたというし、まさにジャケの世界そのまんまの生活、そのまんまの音楽なんです。これこそ英国フォークの「秘宝」。


これはもう「わらべ歌」ですね。か細く震えるような声で子守唄のようにボクを優しく包んでくれる音楽です。でも、ただお母さんのようにやさしいってわけじゃなくて、何かこうどこか不安定で落ち着かない感じもするんです。その歌声は、まるで闇を恐れている子供のようにも聴こえてきます。このアルバムを聴いて「なにか怖い」という人がいても不思議じゃないと思います。でも本当に美しいものって、そういう「恐さ」と紙一重なんじゃないでしょうか。


もうこれ一枚で消えた幻のシンガーというはずでしたが、去年復活してまた新しいアルバムをフッと発表しましたね。音楽を再びやり始めた理由も、たまたまキーボードを手に入れて、何となく曲が出来たからとか、そんな理由だったそうです。これこそまさに生き方そのものが音楽の人を象徴するお話ではありませんか。35年ぶりに人前に復活しても、なんともマイペース。そういうミュージシャンだっているんです。それに比べて、音楽業界がどうしたとか、ヒット・チャートがどうしたとか、なにをみんな焦ってるでしょうか。


なんてことを、聴きながら書いていたら、いつのまにか音楽が終わってしまいました。今日は、もう一度このアルバムを聴いて寝る事にします。おやすみなさい。

http://www2.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=168425&log=20040126