なんかミュージシャンよりも会計事務のお仕事が似合いそうな地味なルックスのレスリー・ダンカンですが、なかなかに素敵な笑顔の持ち主ですね。シンガー・ソングライターだというのに、アクやクセのまったくない女性。なのに徹底的に普通のポップスであることが、だんだん妙に愛しく思えてくるという、罪作りなサウンドでもあります。もしボクが英国に生まれていたなら、こういう女性が理想の奥様だとかなんとか言ってみたりして。


コーラスの仕事も多い彼女の、これはファースト・アルバム「Sing Children Sing」('71)。何となく「ひこうき雲」や「ミスリム」あたりの荒井由実のような感じでスタートします。バックを務めるのはティン・パン・・・ではなく、クリス・スペディング(ギター)、エルトン・ジョン!(ピアノ)といった、UKの実力派ミュージシャンばかり。そういえば、エルトンに憧れて曲を作ったのがケイト・ブッシュなんですが、あっちはアクとクセのカタマリのような人ですからねぇ。同じUKでも、こうも違うか・・・。ケイトも実はキュートな女性ではあるんですけどね。でも、あんまり奥さんにはしたくないな(笑)


「Love Song」は彼女の曲の中でも有名で、いろんな人がカヴァーしていますが、その曲を挟んでアルバムB面の流れが実に素晴らしいのです。わりとソウルフルな歌い方ではあるし、曲調そのものは、どこかライト・ゴスペル風だったりするんですが、大袈裟じゃないのと、あくまでポップで控えめなのがいいんですね。それでいて、ジワジワと感動的な気持ちもこみ上げてくるような。ほんのり漂ってくる母性愛のような歌詞も、とても優しい印象をあたえてくれます。


この後発表されたアルバムも、どれも内容は素晴らしいんですが、かといって「こりゃ名盤だ!みんな聴いてくれ」と声を張り上げて言うほどのもんでもないような。レビューしておいてなんですが(笑)やってる方も聴く方も、とにかく大袈裟なことは似合わない、そんな音楽です。何となく見つけたら、何となく買ってみて、何となくいい気分になれたら、それで充分なんじゃないでしょうか。