ニック・ドレイクの音楽とじっくり向き合うのは夜、それも真夜中ということが多いわけなんですが、「ブライター・レイター」('70)あたりを聴いていると、彼は別に人を落ち込ませるような暗い歌ばかりを歌っていたわけでもないということがわかってきます。このセカンドは、ほのかに明るい。といっても、カラッと晴れたお天気ではなくて、結局どんより曇ったままなんですが。


オープニングのギターのアルペジオとストリングスの調べを聴いただけで、天にも昇るような気分です。彼は、もうとっくに天に昇ってしまったのですけれどね。「Poor Boy」「Northern Sky」と名曲が続くあたりの雲間に光がこぼれるような雰囲気が何度聴いてもたまらないのです。個人的には、古今東西、今まで聴いたどのSSWアルバムの中でも10本指に入るくらい大好きなアルバムかも。


昔、CDショップで働いていた頃、高校生、いや、それこそ中学生ぐらいの制服を着た女の子が、このCDを持ってレジに近づいてきました。ジャケ買いにしてもセンスがありすぎ。思わず声をかけそうになりましたが、それきりです。彼女は聴いてどう思ったんでしょうか。「最初は地味に聴こえるかもしれないけど、絶対に手放しちゃいけないよ」という余計なおせっかいを、ここでその彼女に捧げます。