ジャケットがスゴイですね。ウィル・マローンさん、まるで新興宗教の教祖様のよう。思わず「修行するぞ!」という気分にもなりますが(ウソ)内容は別にシゴキ系ではなく、木管楽器とストリングスが絶妙にからみあう、実にドリーミーな70年代初頭のフォーク・アルバムです。このジャケット・デザインは、知る人は知っているキーフ。どこかシュールであり、何となくサイケな感じのデザイン・センスは音にもよく現れています。和みフォークかと思ったら、急にボーカルにサイケなエフェクトがかかったりするあたり。


このマローンさんは、英国ポップ・バンド、オレンジ・バイシクルのキーボード奏者だった人です。ちなみにオレンジ・バイシクルのアルバムはヒプノシスがデザインを手がけていますが、70年代初頭って、ほとんど目にとまるようなジャケってヒプノシスかキーフだったりしますよね。で、肝心のマローンさんですが、あまり歌は上手くないです。マラソンで走った後みたいに何とも苦しそうにボソボソと歌っています。が、その感じが逆にアルバムの心地好く気だるいムード作りに貢献しているともいえるわけで。


でもマローンさんは、その後、プロデューサーとしていろいろなバンドを手がけてゆきます。近年ではヴァーヴなんかもそうらしいんですが、何といってもアイアン・メイデンのファースト(!)でしょう。このアルバムと結びつかない音楽性ですが。それを思うと、このアルバムは、彼の音楽性の趣味趣向ということだけでなく、やっぱり時代が作ったといいますか、時代のなせる業でもあったのでしょう。ファンタジックで幻想的なUKフォークとしては、期待を裏切らない音楽だけに、これ一枚で消息不明になったシンガーだとしたら、変な話、今よりもっとカルトな地位を得たアルバムかもしれません。