「名前のない馬」で有名なアメリカというグループは、実はイギリス出身だったりします。この例にもれず、「イギリスのアメリカ」みたいなバンドは結構多いのです。特に70年代初頭というのは、本当にアーシーなアメリカン・ロックに魅了された音楽が、世界中にあふれていたんだなぁと思う今日この頃。たとえば、このフォーマリー・ファット・ハリー('71)という英国のバンドなんかに偶然出会ったりするとね。元カントリー・ジョーのブルース・パーソルが英国で作ったバンドということらしい。アメリカ人主催のイギリス産アメリカン・ロックですね(あぁ、ややこしい)


これ一枚で終わってしまって、しかもセールス的にはさっぱりでしたので、よほどの英国ロック通でもないと、なかなか知らなかったりするバンドかもしれません。ボクも何となく存在は知っていましたが、数年前に日本で紙ジャケCD化されたことで、ようやくバンド名をハッキリと認知できたというくらい。そのくらい地味で奥ゆかしいアルバムなのですが、内容は絶品。まさに英国産ながら、アーシーなアメリカン風味満載。しかし、聴けば聴くほど「でも、これってやっぱり英国だよなぁ」と思ってしまうのも不思議な魅力があります。


スットコトンという感じのドラムの音は、決して激しいビートを叩くことなく、淡々とミディアム・テンポのビートを叩き続けます。ピアノやオルガンは、何の派手な音響処理もなく、そのまんまの音。エレキ・ギターは激しいデストーションもなく、アンプにつないで、そのまんまみたいなナチュラルな音。ボーカルはシャウトするわけでもなく、これまたノホホンとした声で歌うだけ。まったくもって普通すぎる、地味すぎる音なのに、なんでこんなに聴けば聴くほど味が出てくるんでしょう。ザ・バンドリトル・フィートより、今のボクにはこっちの方が身近な音かなぁ。その理由をうまく説明できないんですけど。