ジャケットからしてキテますなぁ。サイケといえばサイケなんですが、何かこう田舎の美大生が一所懸命描いたようなアマチュアっぽさというか。いや、音の中味も、そんな感じなのです。このインクリディブル・ストリングス・バンドというのは、誰が聴いても「変」とハッキリ言い切れる強烈なサウンドなのに、意外にもUKフォークのグループの中では、かなりセールス的にも早く成功したバンドだという。この2ndの「The 5000 Spirits」が1967年作ですからね。ドノヴァンに続くUKフォークのスターがコイツらだったとは・・・。しかもペンタングル結成前のダニー・トンプソンがベースで参加し、その後フェアポート・コンヴェンションのプロデュースでも成功を収めるUKフォークの大物ジョー・ボイド制作という、なかなか強力なスタッフに支えられてます。なのに、このヨレヨレした音は何なのよ?(笑)


デビュー作は3人でしたが、このアルバムからマイク・ヘロンとロビン・ウィリアムソンの2人組になって再スタートしました。基本的にはスコットランドアイルランドあたりのトラッド風味に、ほんのチョットUSフォーク的なカントリー風味やR&B的な要素がある感じなのですが、わりとマトモな曲を作るマイク(それでも充分ヘンですが)とは違い、彼を盛り上げているのか邪魔してるのかよくわかんないのがロビンの存在。この人がシタールだのダルシマーだの、変な古楽器サウンドに個性的な色を加えます。これがサイケを通り越して、まるでインドの民俗音楽でも聴いているような気分に。さらにロビン自身が作る曲にいたっては、AメロもBメロも小節もリズムも関係ない中近東風味のアシッドなフォークで、ヘビ使いのインチキ魔術師みたいな声でヘロヘロと歌うわけです。ヤバすぎるんだけど、これがハマるとねぇ。


何でもボブ・ディランマリファナしてるときBGMが、このアルバムだったとか、そんな噂話までも飛び出す始末。アメリカでこれが売れたのも、やはりそういう危ない目的で人気だったとか?これを聴いて「エブリバディ〜マスト・ゲット・スト〜ンド!」ってことでしょうか(笑)そう考えると、何だかディランの「雨の日の女」って、ニューオリンズというより、どこかインクリディブルっぽい感じに聴こえません!?