ヘロンのファースト「heron」('70)は、英国フォーク好きなボクにとっての座右の銘みたいなアルバムなんですが、じゃぁセカンドはそうでもないの?というと全然そんなことはなく大好きなんですけどね。ただ微妙に雰囲気が違います。ファーストが小鳥のさえずりも印象的なヒッピー系フォークだとしたら、このセカンド('71)は、もっと大らかなフォーク・ロック・サウンド。ドラムも入る曲も多いし、わりと元気な曲も多い。ジャケット通り、同じ野外録音ではあるんですが、ファーストが朝っぽいイメージなら、こちらは昼のイメージでしょうか。2枚組LPなのに1枚分の値段という価格の安さが当時のウリだったようです。アルバム・タイトルそのまんまですね。でも結局その後の中古市場でウン万円のレア盤になるとは、何とも皮肉。


1曲目から素人がカセット録音したかのような「おいおいリハーサルかよ!」というダラダラ感でスタートします。まぁこうじゃないとヘロンって感じがしないから不思議なもの。更に、何が可笑しいのか、サビの部分でメンバーが笑っております。こんなプロ意識ゼロ丸出しの音で発売OKにしたDawnレーベルの心意気は感服です・・・が、このレーベルのアーティストは、どれも当時全然売れてないんですよねぇ(笑)だからこそ、今となっては唯一無比の美味しさなんですが。リーダーのG・Tムーアは、その後レゲエ・ギターズを結成します。そうか。このダラダラ感ってロック・ステディみたいな初期レゲエに通じるノリに近いのかもね。音が悪さが味になる感じとか。テキトーにやってるようで、意外と深いなぁ、このバンド。


このアルバムではモータウン系のソウル・カバーもやったりして、このバンドが同じ英国フォークというジャンルで語られつつも、フェアポートやスティーライとか全然違う土壌にいるということがおわかりでしょうか。つまりは、これも「イギリスのアメリカ」です。なのにどうして、ボクはヘロンに、こんなにまで「英国」を感じてしまうんでしょうか。たとえば「Winter Harlequin」という曲。この曲の後半で、延々と続くアコースティック・ギターアルペジオ。人によっては眠くなるだけなんでしょうか、この幻想的な雰囲気は、絶対に彼らにしか出せません。ジェネシスなら、この曲をもっとどんどん展開して「サパース・レディ」みたいに盛り上がっちゃうんでしょうが、そうはしない、あるいはできない。それがヘロンの味というものなのです。