ブライアン・オーガーはアシッド・ジャズフリー・ソウルなどのシーンで再評価されたアーティストですが、現役時代、全然人気がなかったかといえば、そういうわけでもないようです。本国イギリス以上に、アメリカなどではかなり人気があったミュージシャンでした。ただリアルタイムを知らないボクがオーガーの名前を初めて知ったのは、UKのマンチェスター・ブームの頃シャーラタンズがトリニティ時代の「インディアン・ロープ・マン」をカヴァーしたからです。思えば、あれが自分にとってハモンド・オルガンのカッコよさに気づいた最初の曲かも。


その後、70年代ジャズ・ファンクが90年代初頭のクラブで流れて、ハモンドがトレンドになりつつあったころ、その元祖みたいな感じでオーガーが再評価されていったようです。オルガンといっても、たとえばブッカーT&MG’ズよりオーガーの方が新しい世代にウケたのは、やはり楽曲そのものの洗練度にあるようです。そこそこロックで歌もあり16ビートが多く、時にフォーキーでエレピやコンガも入ったりする。アヴェレイジ・ホワイト・バンドほどファンクにこだわったわけではないという妙にイナたいロック感覚が、レア・グルーヴ以降の洗練されたフリー・ソウル感覚とマッチしたともいえます。英国ならではのモッズ的なカッコよさも重要でした。


ボクはベスト盤でオーガーの魅力は充分に把握していたつもりでしたが、紙ジャケCDで一気にそろえた70年代のオブリヴィオン・エクスプレス時代のオリジナル・アルバムのカッコよさに、ますますオーガーのファンになりました。中でも「クローサー・トゥ・イット」('73)は最高に盛り上がります。普段は家で音楽を聴くのが好きなボクも、これだけはクラブで大音量で聴きたいサウンドです。ファンキーではありますが、同時に英国ロック的な陰影がサウンドに影を落としていて、そこに大きな魅力を感じます。まぁそんな理屈ぬきでも充分カッコいいってことは、クラブ・シーンでの人気が既に証明してますけどね。