ブリジット・セント・ジョン(Bridget St.John)は、イギリスの人気DJジョン・ピールのレーベル「ダンデライオン」からデビューした女性SSW。以前紹介したセカンドがロン・ギーシンによるムチャクチャなオーケストラで、ある種のきわどさギリギリのアクの強さで勝負したアルバムなら、こちらサード「Thank You For...」('72)は、気心知れたミュージシャン達と作り上げたリラックスしたフォーク・ロック。好対照ながら、どちらも格好つけがたい名盤です。


ジャケットの手ぬぐいみたいのかぶった彼女の写真を初めて見た時「あんた、パートのおばさんか?」とか思って、格調高いセカンドのジャケとのギャップに拍子抜けしたものの、中味の音が聴けば聴くほど好きになると、不思議にこのジャケもキュートな感じに思えてくるのだから不思議。声質は大柄な女性らしくモッサリした感じなのですが、シンプルで美しいメロディーを一つ一つ確かめるように歌う感じは、実に好感が持てます。


カヴァー曲ではボブ・ディランの名曲「ラブ・マイナス・ゼロ、ノー・リミット」なんかも光ってます。「Happy Day」のようにシンプルな弾き語りからバンドによる盛り上がりに急展開する感じも実に面白い。ベスト・トラックは、当時の彼女の夫ナイジェル・ベレスフォード作の「Goodbaby Goodby」で、これは名曲!ちょっと前に奇跡の復活&来日をしたブリジットですが、さて新作はいつ?