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シャーリー・コリンズは英国トラッドの中でも重要な女性シンガーの1人なんですが、かといって決して「上手いシンガー」というわけでもなく、正直そこらへんのオバサンが歌ってるような一本調子のヘナヘナ声だったりします(失礼)。いや、だからこそ、あくまで「民衆の唄」であるトラッドの本質にはピッタリともいえる声ともいえるわけです。何ともいえない田舎情緒溢れる素朴な味わいのある声。
これは彼女が実姉のアレンジャー、ドリー・コリンズとのコンビで発表した「Anthems in Eden」('69)というアルバム。古楽復興の雄デイヴィッド・マンロウを迎えて「古楽とトラッドの融合」を目指したというとんでもないアルバム。A面は次々と伝統歌が流れる組曲形式になっていますが、時代性無視という意味でも、ここまで徹底したトラッド・アルバムも、そうあるものではありません。
その後、アシュリー・ハッチングス(シャーリーと結婚もした)と組んだアルビニオン・カントリー・バンドあたりにもなると、デイヴ・マタックスがドラムを叩いたりもしてるので、幾分フェアポート的なロック・サウンドに近いんですが、この頃のコリンズ姉妹の音楽は、完全に「ロック無視」。しかし、この聴き手に媚びないシゴキ系に徹する姿勢に、ボクは逆に「ロック」を感じます。