ペンタングルの「クルエル・シスター」('70)は全曲トラッドなので、今回のトラッド特集の流れで取り上げてみました。さすがUKフォークの大物グループだけあって、格調の高さと完成度は、そこいらへんのマイナーものとはワケがちがいます。こうなると、もはやジャケも含めて「西洋アンティーク」な世界です。


以前のペンタングルのようなバート・ヤンシュとジョン・レンボーンの火花散らすギター合戦にダニー・トンプソンの生ベースとテリー・コックスのドラムがジャズっぽい盛り上がるという、わかりやすい「熱さ」に比べると、この「クルエル〜」は、あまりにも淡々として地味に聴こえます。というか冷めてますな。しかし、いったんハマると、これがいいんですよ。


というわけで、代表作とも問題作ともいえるアルバムなわけですが、それまでよくわかないない微妙なポジションだった女性シンガー、ジャッキー・マクシーの存在も実に鮮明に浮かび上がってきて、とにかく歌モノのアルバムとしては最高の極上品です。ただアナログA面でドラムが全然登場しないのは昔からの謎。テリー・コックスは昼寝でもしてたんでしょうか。