「オールド・ロッテンハット」('85)は、ボクが中学生ぐらいのときに買ったレコードだけど、この頃はロバート・ワイアットのことも、ソフト・マシーンの元ドラマーだということも、何も知らなかったような気がします。今思えば、ここからカンタベリーの長い旅を彷徨うことになろうとは知らずに。


たしか当時、このアルバムは「ウィー・アー・ザ・ワールド」的なチャリティー・ブームの、ある種の対極的なアルバムとして音楽雑誌にレビューされていました。あっちがみんなで肩を組んで大声で歌いながら世界平和を唱えるなら、こっちはたった一人でボソボソとした声で歌い演奏しています。歌詞はきわめて政治的な警告ばかりで危機感に溢れています。基本的にチャリティーに懐疑的なボクは、断然後者のスタンスに共感したわけですね。


ただし、ここで歌われているワイアットの歌詞は、中学生の理解力を超えるものでした。でも、ひたすらメロディーの美しさと全体を包み込む静かな雰囲気に浸るだけで満足でした。数ヵ月後、同じ輸入レコード屋で、Ben Watt with Robert Wyattの「Summer Into Winter」を買いました。同時期にポッパーズMTVで初めて「シップビルディング」のPVも観たような記憶があります。