アンソニー・フィリップス(Anthony Phillips)は、元ジェネシスのギタリスト。といっても、フィル・コリンズが加入して、プログレ〜ポップ時代の全盛期になる前に、とっとと脱退していた人。なんとも地味なポジションではあるんですが、むしろ、その控えめな立場を利用して、マイペースで趣味趣味なソロを発表し、音楽活動を続けています。


このファースト・ソロ('77)は、当時ひっそりと自主制作盤という形で発表したアルバム。ジェネシスのファンタスティックで穏やかな部分を拡大したようなサウンドで、まさにジャケット通りファンの期待を裏切らない、素晴らしいものでした。トロトロとしたギターの多重録音は、まるで「音の響き」だけで童話を伝えてるかのように、ひたすら美しいばかり。


普通、盛り上がるパートは、ドラムが派手になり、リズムでグイグイ押したりするものですが、この人の場合、ドラムは一切入らず、多重録音しているギターの数がどんどん増えていくというやり方がユニークです。こういう発想は、ロックが基本にあるミュージシャンからは、なかなか生まれるものではありませんよね。