苦悩に歪んだ顔ジャケがクリムゾンの「宮殿」並にインパクトを与えてくれるコウマス(Comus)のアルバム('71)。音もジャケに負けてはいません。詞もサウンドも徹頭徹尾アンダーグラウンドな世界。一応、英国フォークに分類されてますが、これでフォークなら、フォークとは何でもアリの世界ですね。


ぼんやり聴いていると、ただダラダラしているだけに聴こえるかもしれませんが、これほど「美」と「狂気」が渾然一体になって迫ってくるプログレッシブ・フォークは他に類を見ません。女性ボーカルは美しい感じですが、対するひしゃげた男性ボーカルのアクの強さたるや。これはもうスパイロジャイラの比ではありません。


ギター以外の核となるのはパーカッションとヴァイオリンで、ドラムレスにもかかわらずロック的な迫力も。ダークでドロドロと怖いサウンドの合間を縫って、ふっと現れる静かな夕暮れ時のような美しいアルペジオが流れたりと、とにかくドラマチック。個性的過ぎて聴き手を選ぶ異様な音楽ではありますが、この構築美はお見事。