星の王子さま」を好きな人は、何度も何度も読み直していくうちに、自分なり解釈でストーリーを作り変えていくのでしょう。そんな、おとぎ話やファンタジーのような絵本にも近いものを、ボクはジェネシスの初期のアルバムに感じたりします。当時の邦題が「月影の騎士」('73)であるこのアルバムなんか、ジャケからして絵本っぽいですしね。


実際にはオカルトだったりナンセンスだったり風刺の利いた皮肉たっぷりの歌詞だったりするのに、このアルバムなど実際の音そのものは、彼らのアルバムの中でも、もっともやわらかく優しい匂いがします。プログレらしいドラマチックな展開はあるものの、アルバム全体に立ち込めるのは、やっぱりイギリスの田園風景そのもの。


ボクの周りの友達に「ジェネシスを好き」という人はあまりいません。さらに、こういうタイプの音楽をやっているミュージシャンもあまりいません。こういう詩情豊かなロック大作主義はニュー・ウェイブ以降、徹底的に世間一般から無視されつづけているような。でも、ボクにとっては「星の王子さま」級の永遠のスタンダード。