よく「今回のアルバムのコンセプトは・・・」と話すアーティストが多いんですが、実際のところは曲が増えたからテキトーにまとめたなんてのが本音のところで、コンセプトなど後からこじつけてる人がほとんどではないでしょうか。でも、あがた森魚の場合は全然違います。まずコンセプトありき。


この人ほど昔から「アルバムのコンセプト」をデビュー以来徹底的に煮詰めて音楽を制作しているミュージシャンも珍しいです。4畳半フォークだの何だの言ってる時代に、端正な文学作品でも発表するかのようにアルバムの音を丁寧に紡いできました。自虐的なほど不器用な歌唱も、子供のように無垢な力を秘めています。


優れた映画監督は同時に優れたスタッフにも恵まれます。細野晴臣プロデュースでムーンライダーズら豪華なミュージシャンが総動員した「日本少年」('75)もまさにそう。聴いてると、名前も忘れた小学校時代の同級生のことをふと思い出しました。想像力だけを頼りに妄想で描いた少年の夏休み日記のように切なく甘酸っぱい。