「音のメルヘン屋」というのをご存知でしょうか?インディーズ盤の先駆者的会社といえばカッコいい感じですが、要は「あなたのレコード作ります」的な自主制作レコード会社兼音響スタジオ。実はCD時代になった今でも存在しているんですが、この佐藤マサ&香港フラワーズ('76)も、そんなメルヘン屋制作の知られざるレコード。


結局は身内に配って終わりみたいな学生の卒業記念アルバムみたいな感じだったのでしょうが(当時20歳!)、反応したメジャーのレコード会社(ディスコメイトと東宝)から別名義で出た2枚のシングル曲も追加してCD化されています。なんでも「場末哀歌」を浜田真理子がカヴァーしてるそうで、わかるでしょ、その感じ。


細野晴臣の「泰安洋行」と同じ年に、こんなローカルな形で「中華サウンド」が作られていたというのも驚きですが、いわゆるニューオリンズ的な洋楽志向は皆無。わびしくチューニングのずれた大正琴やリズムボックスが、まるで煮込みすぎて骨だけになってしまった「在りし日の歌謡曲」のような旅情を誘ってくれます。