大学生の頃でしたか。たまたま家にある女の子が遊びにきたとき、ボクはちょうどこの鈴木さえ子の1st('83)をLPで聴いているところでした。彼女もひととおり黙ってしばらく一緒に聴いてましたが、その後ポツリと「アタシ、こういう音楽ってキライというか全然わかんない」と言い出したのです。ちなみに彼女はドリカムの大ファンでした。


ここで短絡的にまとめてしまうと「鈴木さえ子とドリカムのスタンスは正反対である」といえなくもないかな、と。「そういうことってあるでしょ?」という普通の女の子なら誰でも経験するような内容が女子の共感を呼んでいたドリカムとは対照的に、鈴木さえ子の曲は、「普通の生活では、こんなことはありえない」という不条理なファンタジー・ソングばかりですし。


たしかに恋愛で傷心している女子に「夏の豆博士」だの「バオバブ人」とかいっても、何もアピールするものはないよと言われればそれまでなんですが。やはり90年代以降のカラオケ文化の中で置き去りにされた感は。後の傑作群に比べると、ひ弱な印象もあるこの1stも、中1の時のカセット・ウォークマンの中では飯島真理の「ROSE」と並ぶ大愛聴盤でしたっけ。