このアルバムで驚くのは、ほとんどの作詞/作曲を早瀬優香子自身が手がけていて、それがまた職業作家が思いもよらないような不思議な曲調だったりすることです。さらに、この歌い方も、単純にウィスパー系とかじゃなくて、何か途轍もない情念の揺らぎのようなものを感じさせてくれます。


ファンク調の「Lobbyの生活」や、レゲエ調の「冷たい水」など、ちゃんと借り物ではなく自分の世界に引き寄せていく確かなアプローチは、それまでのアルバムにはなかった力強さなのかも。下世話な図式ではありますが「歌う女優」から「本格的なアーティスト」へ。今こそ聴かれるべき傑作なのかも。


それにしても「土地、愛すべきものー沖縄ー」は何という不思議な曲なのでしょう。1曲1曲が濃すぎて、聴き手を一気に桃源郷へと誘うかのような、ものすごいイメージが次から次へと溢れる濃厚なアルバム。なのに、近づこうとすればするほど逃げてしまう野良猫のような優香子さんの歌声が、儚い。