季節の変わり目というのは、街の匂いも変わってゆくような気がします。ボクは、この「季節の匂い」というものに昔から敏感で、肌で感じる寒さや暖かさより、家の玄関から飛び出して一瞬、ホンの数秒間に「あ、季節が変わってる」と匂いで反応してしまう方が感情が揺さぶられます。


たとえば車の排気ガスや下水のような匂いが少々混じっている風の匂いでも構わないのです。そういう街の匂いは、ボクが今まで育ってきたいろんな環境を思い起こさせるのです。たとえば「あ、これは10歳の頃、友達の家に遊びに行った古い路地の匂いだ」とか。金延幸子の「み空」は、そんな今と昔を繋いでいく季節の匂いみたいなものを感じるアルバムです。


細野晴臣周辺が参加していることで吉田美奈子の「扉の冬」あたりにも確かに近いんですが、アレンジとメロディーが、いい意味で印象が「淡い」ために、もっとのんびりと静かな印象。最近だと寺尾沙穂なんかも、このタイプかな。こういう素朴な音楽は流行が変わっても、常に手元に置いておきたいもの。いつまでも若い世代に再発見され続けられる名盤だと思います。