カルロス・カラードの著書「トロピカリア」を読んで一番面白かったのは、ムタンチスの連中の無邪気さでした。60年代後半の革命の季節。カエターノ・ヴェローゾの過激なアジテーションで客がみんな怒り、トマトをステージに投げつけたりしていた暴動の最中でも、バックのムタンチスは皆、ヘラヘラ笑っていたといいます。


カエターノがビートルズに目覚めるもっと前から、ムタンチスはビートルズの大ファンで、その「無邪気な誤解」ともいえるサイケなアルバムは日本でも再発され話題に。その紅一点ヒタ・リーの、このソロアルバムも、けっこうキテますが、まぁほとんどムタンチスと同じ。「And I Love Her」のカバーもあります。


どの曲も2分前後。アレンジは終始落ち着かなく、聴きながら、いったい曲がどこへ向かうのかわからないまま、突き放すように突然終わってしまいます。ゴージャスなのに変テコなオーケストラのアレンジは、おなじみのホジェーリオ・ドゥプラ。全曲すべてが逆回転再生かと思うくらい、頭がクラクラしっぱなし。