それまでのシングルのカップリング曲などを、ほぼ発売順にそんまんま並べただけのような2枚組CD。世間では裏ベストみたいに売り出してますが、これは椎名林檎が大好きに違いないビートルズの「ホワイト・アルバム」を、見事に具体化してしまったかのような、スリリングな「新譜」として聴けます。


とにかく曲から曲への移るときの脈絡のなさが、この人のエキセントリックなキャラクターと見事にマッチしてます。よくよく考えると、こういう人が第一線で活躍しているという日本の音楽状況って、なかなかにオルタナティブなのかも。才能があって、やりたい放題やって、それで売れてる人なんて、ホンの一握りでしょうけど。


ただ色っぽいだけじゃない、このツンデレな美学。毎回のジャケも衣装も含め、それを究極まで突き詰めた総合芸術。正直、親しみが持てる音楽(人)ではない。けど、時々、無性に恋しくなる。ヴァーチャルなエロスに翻弄されながら、どうしようもなく「S」や「M」の感情を揺り起こしてしまう、本当に危険なポップス集。