44年の短い生涯で、残したリーダー作はごくわずか。残りの人生は、気の向かないセッションの「お仕事」だったという不遇のピアニスト、ハービー・ニコルスが、もっとものびのびと自身の才能を発揮したアルバム。ブルーノートのアルフレッド・ライオンだからこそ実現できた野心的な作品のひとつ。


ラストだけガーシュインの曲で、残りはすべて自作の曲ばかり。フレーズは飛び飛びで、パーカッシブ。予測不可能なアドリブ。間を生かしたアンサンブル。そして何より、全体を包み込むユニークかつミステリアスが空気がたまらない。ビリー・ホリデイで有名な「The Lady Sings The Blues」の作者版もあり。


聴けば聴くほど「う〜ん、これは売れないよなぁ」と思うほどコアな作品なのに、割とオーソドックスな4ビートにも聴こえてしまうという。内面は尖ってるのに、表向きは地味という。モンクほど攻撃的じゃないからわかりにくいけど、これは本当に聴けば聴くほど発見がある隠れたピアノ・トリオの傑作。