結成20周年を記念して制作された彼等の最終作。緻密で練りに練られたアルバムは、単なる和み系ボサノヴァとは違います。徹頭徹尾プログレッシヴ。曲によってはフリー・ジャズや現代音楽スレスレの部分も。それでも最終的には甘美なコーラスとメロウなコード・ワークでMPBとしてまとめあげられてます。


思えば、これだけ複雑な演奏を繰り広げながら、反面これだけ力の抜いたコーラスワークを駆使するというのも、相当な芸風といえます。誰か1人欠けただけでも、まったく成立しない親密なトライアングル。ピアニスト、ルイス・エサのアレンジ能力と打楽器のエルシオミリートの多彩なリズム感覚。


そして何より「タンバ・トリオ」らしさを形作っているのがベース&フルート担当のベベート。彼が切々と歌う7曲目の味わい深さは泣けます。日本でいわゆるボサノヴァというと決まった一定のリズムで終始してしまうもの。ここで聴かれるブラジル音楽の複雑な和声とリズム感覚は本当に鍛え抜かれた職人芸なのです。