異種格闘技を装いつつ、その後の英国フォーク/トラッド・ロックの原型になったマスター・ピースが、このシャーリー・コリンズとデイヴィ・グレアムの共演盤。いかにも伝統的なトラッド・シンガー、シャーリーの素朴な歌声に、変幻自在なテクニックで革新的なフレージングをギターで奏でるデイヴィが寄り添います。


とにかくデイヴィのギターが圧巻。ブルースやジャズはもちろん、インドやモロッコの音楽にも影響されたそのテクニックは他に類を見ないもの。無伴奏が基本の英国トラッドの歌にアコースティック・ギターが伴奏することが、むしろ異色だった当時の事情など、逆に今となっては信じられませんけど。


フェアポート・コンヴェンションやペンタングルに数年先駆けること64年の作品。英国フォークのギタリストは、みなデイヴィの演奏に影響されたはず。ただロック的なカタルシスを求めると、さすがに地味すぎて、ある程度の素養がないと、ピンとこない音楽かも。一度ハマると、もう抜け出せなくなる音楽なんですけどね、これが。