世界初のパンク・ロック・アルバム、なんて身構えて聴いてしまうと、スローで静かで、妙にまったりとしたピアノを主体にした曲もかなり多いので、ズッコケてしまうかもしれません。が、いわゆる70年代の女性シンガーソングライター系とは全然違うのは、ジャケを見てもあきらか。そっけなく、ぶっきらぼうで、強い新しい女性像。


情念のおもむくままにテンポが上がったり下がったりしながら、メロディにまったく依存せずに吐き捨てるように歌う様は圧巻。ギターのレニー・ケイは、「ナゲッツ」の編集者としても有名ですが、ここでもガレージ・ロックサイケデリックな感触は随所に。とにかくバンド以外の音を加えないシンプルな感触がカッコいい。


やはりパティ・スミスはパンクの元祖じゃなくて、優れたロック詩人と呼びたいもの。昔のビートジェネレーションがジャズをバックに詩を語ったように、ロックをバックに詩を語るのです。ジョン・ケイルのプロデュースは大人しいともいわれますが、「バンドに何も手を加えていない」という点で優れてドキュメンタリー的。