最近のジャズがダメになったとは思いませんが、こういう味のあるジャケットは、めっきり少なくなっているような。このアルバムは、10代の頃、草の上に横たわる美女に一目惚れして買った一枚ですが、中身の音楽そのものが好きになる感じも、このジャケットが好きになる感じと、実際すごく似ているわけですよ。


ジョン・ルイスのリリカルなピアノもさることながら、ビル・パーキンスのサックスの音色が優しく響きます。また、チコ・ハミルトンのドラムやジム・ホールのギターを聴いてると、映画「真夏の夜のジャズ」での彼らの演奏する姿が同時に目に浮かぶようです。音を流した瞬間、部屋の雰囲気は一気に50年代へタイムスリップ。


「音楽を雰囲気で聴かないで、何で聴くの?」とは小西康陽氏の名言ですが、実際自分でジャズの理論などを少し勉強して、ミュージシャンの端くれとなった今の時点で聴いても、改めてどれもが名演だと思います。実に底知れぬ1枚。Pacific Jazzというレーベルが、ジャズの最も幸福な時代の象徴なのかも。