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キャラヴァンの良さというのは、その独特の「ゆるさ」にあるような気がします。常に緊張感が持続するイエスのような精密さとは違う、何かがボンヤリしながら、すべてが淡々と進んでいくようなサウンド。ギターもキーボードも、一切難しいことをしていないにもかかわらず、気がつくと、なにやらとんでもない迷宮に入り込むような。
そうしたイギリスの「カンタベリー・ミュージック」の最高のサンプルが、このキャラバンの「グレイとピンクの地」というアルバム。そういえば、このジャケットの色の薄いイラストのタッチがすごく好きなんですが、この絵の「ゆるさ」も、中身の音楽と見事にマッチしてます。緻密なロジャー・ディーンのイラストとは、大違い。
A面は比較的ポップな曲が収められています。メロトロンがそよ風のように舞い、リチャード・シンクレアの朴訥した歌声が印象的。そしてB面すべてを使って繰り広げられる「9フィートのアンダーグラウンド」は、カンタベリー系の美点をすべて濃縮したような超名曲。鳥になったような気分で「聴きながら飛べる」この感じが最高。