巨大なシンセの機材の山に囲まれながら作り出される70年代初頭ぐらいまでの電子音楽。その音楽家は、必ずといっていいほど、どこか実験室にこもって研究を続ける科学者のようなシリアスな雰囲気がありました。ジャーマン・シンセサイザー奏者の重鎮、クラウス・シュルツも、そんな1人。


もともとアシュ・ラ・テンプルやタンジェリン・ドリームの最初期のドラマーでもあった彼は、急にシンセの多重録音の道を突き進みます。スタイルや作風は徐々に変化しながらも、徹底してシンセにこだわったソロ作品群。そのディスコグラフィーは増え続けるどころか、時には50枚組のCDなど爆走状態。もはや人間国宝級。


そんな彼の記念すべきソロ第一弾。変調オーケストラ。ノンリズムのままシンセベースの間延びした音。細かいディレイ処理。長い曲。歪んだオルガンが炸裂・・・など、とにかく「重い」「暗い」「怖い」のオンパレード。でも全部聴き終わると、不思議な開放感が。ボクにとっては、究極の癒しの1枚。