1曲目を聴いて「ふ〜ん、アクを抜いたドナルド・フェイゲンみたいだなぁ」ぐらいに思ったのに、全部聴き終える頃には、すっかりいい気分になってしまいました。ジャジーで複雑なコード進行をシンプルなリズムでポップに聴かせたりとか、とにかくセンスがいいのですよ、この人。歌い方もサラっとしているようで、結構上手い。


バラードの2曲目では、生ピアノとスキャットのユニゾンでソロをやったり、元気のいいシャッフルビートの4曲目や、ヴァン・モリソンの「ムーンダンス」調のジャジーな5曲目とか、いろいろな曲調はあるものの、アルバム全体が統一されたムードなんで、もう全部同じ曲にしか聴こえない(AOR的に、これ誉め言葉です)


ビル・カントスは、ジェイ・グレイドンのバンドの音楽監督を務めたキーボーディストで、その才能に目をつけた日本のレコード会社によって制作された本作。「明日巡り逢う君」というダサダサの邦題と地味なジャケのせいで中古バーゲン品が今でもゴロゴロしてますが、90年代AORのベスト10に入る名盤かも。