英国フォーク好きにはたまらない、このジャケ写真の雰囲気。ロンドンの橋の上で佇む2人の、ちょっと荒れた感じの画像の質感。そしてジューン・テイバーの、これでもかというくらいに長過ぎるブーツ姿も何とも勇ましい。サウンドも80年という時代とは思えぬ地味さ加減が満載で、数ある英国フォークの中でも、これは文句なしの絶品だと思います。


凄腕ギタリスト、マーティン・シンプソンとのデュオのようなクレジットとジャケ写真ですが、実際にはバンド演奏による曲が多いです。しかし、この上なくシンプル。なにしろドラムがいない。このドラムレスという編成ゆえに全盛期のスティーライ・スパンを連想します。ただマディ・プライアは親戚のお姉さんっぽいですが、テイバーは超インテリな美人教師のよう。


歌に一点の妥協もなく、ひたすらクールで真摯な彼女の歌唱に寄り添うマーティンの生ギターも聴き所。ニック・ジョーンズ同様、ギターの弦をバチンと弾くような奏法も印象的です。そこにヴァイオリンの名手リック・サンダースが絡んでくると、すっかり気分は曇り空の大英帝国。テイバーのアルバムは当たり外れは少なく、どの盤も紹介しても自信をもって薦められます。