1973年のロック・アルバムというのは個人的にも愛着があるものが多いのですが、ポール・サイモンの「ひとりごと」もその中のひとつ。超大作だって書けてしまう超一流の作家による、さらっと書いたような小粋な短編ばかりを集めたような、そんな粋な名曲ばかり。小学生の頃、本作収録の「僕もコダクローム」のシングル盤を買って聴いた時の感激といったら。生まれて初めて本気で好きになった洋楽曲かもしれません。この辺が自分のルーツなのかな。


2004年のリマスター盤CDにはボーナス・トラックが入っています。本来こういうオマケがあまり好きではない自分ですが、このアルバムのボーナストラック4曲は、ポール自身による弾き語りのアコースティック・デモが入っています。これがとても良いのですね。ポールに関してはアレンジで様々なジャンルの音楽から味付けを施して時に賛否両論になったりしますが、本来ギター1本と歌だけで、もうそれは充分にポールの音楽になっているのです。


「Something So Right」という曲が大好きです。甘くなりがちなバラード曲の中で、さりげなくブルージーな7thコードを巧みに織り交ぜる黒いセンス。この人の根っこはR&Bやロックンロールなのです。ジャケットは「I Love New York」のロゴで有名なミルトン・グレイザー。当時はモダンだったのかも知れませんが、今ではちょっとないセンス。でも、この懐かしいジャケの雰囲気が過ぎ去った日々を思い起こさせるようで、音の内容にもとても合ってると思います。