「Walk In The Room」の印象的なギターリフはグレン・キャンベルが弾いている、という話を知ったのは新春放談の大滝詠一氏からでしょうか。バーズの「ミスター・タンブリンマン」もキャンベルが弾いているということで、この曲はフォーク・ロックの元祖ともいわれています。実はヒットしたサーチャーズより先にベンチャーズのバージョンが馴染み深かったのですが、そちらはメロディーよりもリフの方が更に強調されていました。


この曲がジャッキー・デシャノンの自作であるように、まずこの人はソングライターとして大変な才能の持ち主なのです。彼女自身でヒットしなくても、他の人が彼女の曲で数々のヒット曲を生み出しています。ヒットしなかったアーマ・トーマスの「ブレイクアウェイ」も後に英国のトレイシー・ウルマンでリバイバル・ヒットしています。長年の月日に風化することなく、いつの時代もカバーされて色あせないのは、時代に流されない歌詞やメロディー作りの上手さゆえでしょう。


本人歌唱でヒットしたバカラックの「世界は愛を求めてる」が、むしろキャリアの中で異色であることがわかるでしょう。ワンダ・ジャクソン系の迫力ある独特のハスキー・ボイスで、スタイルは後のリンダ・ロンシュタットあたりを先取りした感もあります。ジャッキー本人もザ・バンドの「ウェイト」を誰よりも先にカヴァーし、70年代からはアーシーで優れたロック・アルバムを数多く制作します。でもまずは名曲だらけの60年代のベスト盤を。演奏、歌、曲、どれをとっても完璧!